TNFD Taskforce on Nature-related
Financial Disclosures

TNFD提言に基づく情報開示

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は、企業や金融機関が自然資本や生物多様性に関するリスクと機会を評価・開示するための国際的なフレームワークで、2023年9月にTNFD開示提言(v1.0)が公表されました。
2026年6月の取締役会においてTNFD提言に基づく取り組みを開始することを確認しました。
今回の初回開示では、自然への依存・インパクトおよび自然関連リスク・機会の分析結果をお示しします。

一般的要求事項

【マテリアリティの適用】

当社は、事業活動が自然資本・生物多様性に与える影響(インパクト・マテリアリティ)と、自然が当社の事業・財務に与える影響(財務的マテリアリティ)の両面を考慮する、ダブルマテリアリティの考え方を採用しています。
今後は直接操業のみならず、上流・下流を含むバリューチェーン全体へ対象を拡大し、自然への依存・影響、リスク
および機会を体系的に整理するとともに、当社グループの中長期的な価値創造における重要性を評価していきます。

【開示の範囲】

本開示では、当社グループの主要事業である家電製品・関連商品の小売事業を対象とし、店舗・物流拠点等の直接操業を中心にLEAPアプローチに基づく分析を実施しています。あわせて、製品調達に関わる上流バリューチェーン(製造・調達)および使用・廃棄に関わる下流バリューチェーンについても、依存・インパクトの初期的な評価を行っています。今後は、評価精度を高めながら、バリューチェーン全体を対象とした分析へ段階的に範囲を拡大していきます。

【自然関連課題の所在】

当社は、直接操業である55店舗(2025年8月末時点)ならびに物流拠点等のうち、地理情報を整理したうえで、地理的分散・流域特性・生態系の重要度等を考慮し、東京・大阪・福岡を中心に43拠点を代表拠点として抽出しました。抽出した拠点については、TNFD推奨ツールであるIBATを活用し、自然資本・生物多様性に対する依存・インパクトを分析・評価しています。さらに、自然への依存・影響が相対的に大きいと考えられる拠点を優先的に特定し、リスクおよび機会の所在を明確化しています。

【他の開示との統合】

当社は、自然資本・生物多様性と気候変動が密接に関連しているとの認識のもと、TCFDに基づく気候関連開示との整合・統合を進めています。自然関連の物理リスクについては、気候変動シナリオ(当社TCFDにおける4℃シナリオ)を踏まえた評価を行い、気候関連リスク分析との連動を図っています。今後は、統合報告書および有価証券報告書において、自然・気候・その他のサステナビリティ課題を横断的に整理し、ステークホルダーのニーズに沿った情報開示を推進していきます。

【考慮する対象期間】

短期を現在から2026年まで、中期を2026〜2030年、長期を2030〜2050年とし、気候変動に関する戦略の時間軸と一致させています。

【組織の自然関連課題の特定と評価における、先住民、地域コミュニティ、影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント】

当社は、自然関連課題の特定および評価にあたり、地域コミュニティ、取引先、従業員、消費者等のステークホルダーとの対話を重視しています。具体的には、国連グローバルコンパクトに加入し、10の原則のなかでも当社の経営に特に影響のある項目を特定し、積極的に活動を行っています。
また、CSR調達セルフ・アセスメント等を活用した取引先とのエンゲージメントや、地域社会との協働による環境活動、社内外の関係者との対話や意見交換を通じて、自然資本および人権への負の影響の把握と改善に取り組んでいます。
なお、当社は2022年11月に制定した人権方針に基づく人権デュー・ディリジェンスの枠組みを活用し、自然関連課題と人権課題を一体的に捉え、必要に応じて外部専門機関とも連携しながら、適切な対応と継続的な改善を進めています。

開示提言

【ガバナンス】

当社は、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、取締役会の監督のもと運営しています。本委員会は、サステナビリティ担当役員、執行役員全員および常勤監査等委員により構成され、サステナビリティに関する重要事項を審議し、その結果を取締役会に報告しています。TNFD対応についても同委員会の対応範囲と位置づけ、コーポレート・ガバナンス体制に沿った委員会・監査等の枠組みのなかで運用しています。

【リスクとインパクトの管理】

管理プロセスの全体像
当社は、TCFDに基づく気候関連リスクの管理体制をTNFD(自然関連)においても適用しています。
サステナビリティ推進委員会のもとには、環境(気候変動への対応)、社会(人的資本経営、健康経営、人権の尊重)、ガバナンス(取締役会の実効性の向上)の各重点領域に分科会を設置し、戦略の立案、施策の検討、KPIの策定および進捗管理を行っています。
サステナビリティ関連のリスクおよび機会の監督は、取締役会が最終的な責任を負い、サステナビリティ推進委員会が具体的な審議・推進を担っています。分科会での検討状況や、リスク・機会の特定・評価・管理に関する情報、ならびに各部門から収集したデータは委員会において共有・審議され、重要事項については取締役会へ報告しています。取締役会は、これらの報告に基づき、取り組み状況や目標達成度を定期的に監督し、必要に応じて指示・助言を行っています。

【リスクとインパクトを特定するプロセス】

当社は自然への依存・影響とそこから生じるリスクおよび機会について、LEAPアプローチに準拠したマテリアリティ評価を行っています。
なお、気候変動・自然資本/生物多様性にかかるリスクは、サステナビリティ推進委員会にて審議のうえ、取締役会にて監督されます。
自然関連リスクへの対応については、TCFDで運用中の気候リスク管理プロセスの枠組み・ワークフローを自然テーマへ拡張し、自然の復元・再生等の施策を含めて推進していきます。

【戦略】

当社は、主要事業である家電製品等の小売事業を対象に、直接操業拠点を中心としたLEAPアプローチ(TNFD開示提言v1.0)による自然関連評価を実施しました。
LEAPアプローチとは、TNFDが推奨する、自然との接点・依存・インパクト・リスクおよび機会を体系的に評価するプロセスです。

Locate(自然との接点の特定:試行)

代表的な都市型(駅前高密度)の店舗・物流拠点から複数地点を抽出し、TNFD推奨ツールであるIBAT(生物多様性)およびAqueduct(水リスク)を使用して分析しました。
IBATでは半径50km以内のレッドリスト種数(IUCN数)、保護区(PA数)、生物多様性の保全上重要な地域(KBA数)を確認し、Aqueductにおいては総合的な水リスクを確認しました。
結果は下表のとおりです。大都市圏において、東京都が種の絶滅リスクの軽減に貢献する地域として特定されたほか、水リスクにおいても相対的に留意すべき地域として特定しました。

所在地 IUCN数 PA数(保護区) KBA数 Aqueduct
東京都 2,315 652 8 Medium-high
大阪府 2,141 194 6 Low-medium
福岡県 1,978 178 Low-medium
Low risk
Low Medium
Medium high
High
Extremelyhigh
リスク 分析結果
全体的水リスク 当社が店舗展開している地域は総じて「Low-medium」であった。
水ストレス 関東を中心に「Medium-high」となっており、他地域の「Low-medium」と比較し、留意すべき地域との状況であった。
河川洪水リスク 東北地方と九州地方沿岸部、中部地方に「Medium-high」のリスクが認められた。

Evaluate(依存・影響の診断:試行)

当社の直接操業ならびに上流バリューチェーンにおける自然への依存と影響について、ENCORE※を用いて定性評価を実施しました。
上流の影響は相対的に大きいと推定されるものの、直接操業・上流ともに最も高い評価は「M(Medium)」にとどまり、VH(Very High)やH(High)に該当する項目はないことを確認しました。
※ENCORE:国連環境計画(UNEP)等の主導のもと、金融機関と協力して開発された自然関連の依存・インパクト分析ツール

当社事業形態:家電小売業
ENCOREによる分析結果:VH(とても高い)H(高い)M(中間)L(低い)VL(とても低い)

【依存】

バリューチェーン 生態系影響への構成要素
給水 地球規模の気候調節 降雨パターン制御 気候調整 空気ろ過 土壌および堆積物保持 水流調整 洪水対策 暴風雨被害軽減 生物的防除 固形廃棄物処理 浄水 騒音低減 その他の調整・維持サービス・大気および生態系による希釈 その他の調節および保守サービス・感覚的影響の監査(騒音を除く)
直接操業 L VL VL L VL M M M M VL 対象外 対象外 対象外 対象外 対象外
上流 M VL M L VL L M M 対象外 対象外 M M VL L VL

【インパクト】

バリューチェーン 生態系影響への構成要素
妨害(騒音、光) 温室効果ガスの排出量 非温室効果ガス汚染物質の排出量 固形廃棄物の発生と放出 土地利用面積 水や土壌への有害汚染物質の排出 水使用量
直接操業 VL M M VL L VL M
上流 M L L L L M M

Assess(リスク・機会の評価:試行・定性)

Evaluateで特定した依存・インパクトを踏まえ、TNFD推奨ツールであるWWF BRF (Biodiversity Risk Filter)※を用いて、直接操業についてセクターレベルおよびLocateで分析した地域・拠点レベルでのリスクを評価しました。
※WWF BRF(Biodiversity Risk Filter):WWFが提供する、生物多様性に関連するリスクと機会を特定・評価・管理するためのツール

Very low risk
Low risk
Medium high
High risk
Very high risk
リスクタイプ カテゴリ 指標 重要度
セクター 地域・拠点
物理的リスク 調整サービス
(緩和)
地滑り M 東京都・大阪府周辺はHigh Risk
福岡県周辺はMedium Risk
山火事 M 東京都・大阪府・福岡県の周辺すべてHigh Risk
猛暑 M 東京都・大阪府・福岡県の周辺すべてMedium Risk
熱帯低気圧 M 東京都・大阪府・福岡県の周辺すべてVery High Risk
洪水 M 東京都・大阪府・福岡県の周辺すべてMedium Risk
評判リスク 生物多様性への圧力 汚染 M 東京都・大阪府・福岡県の周辺すべてHigh Risk

これまでの分析結果に基づく、当社における自然資本・生物多様性に関するリスクと機会は以下のとおりです。

種類 分類 項目 発現時期 影響度 対応
物理的リスク 急性 異常気象に伴う風水害の甚大化による店舗被害や休業 中期から長期 台風・豪雨・洪水・猛暑等による店舗への影響は大きいとはいえないものの、外部要因を加味した場合、物流の稼働停止、在庫・什器損壊、空調負荷増のおそれがある。
同じく地域の特性につき、都市型は浸水・内水氾濫、郊外型は河川洪水や地盤条件等を念頭に管理。
慢性 平均気温の上昇により。店舗、物流拠点、子会社等の冷却コストの増加 中期から長期 現在と同様に消費者や従業員の快適な温度設定を基準として、必要に応じた対策を講じる。
移行リスク 政策・法規制 温室効果ガス規制強化等によるコストの増加 中期から長期 ・店舗、事業所等における照明、空調機等の節電を継続。
・照明器具のLED化や高効率エアコン等の計画的な設備投資を継続。
・コーポレートPPA導入拡大によるCO₂削減。
市場 低炭素を求める消費者の意識や行動の変化に対応できないことによる売り上げの低下 中期から長期 グループアセットを活かし、環境配慮型製品、中古品取り扱いの拡大、省エネを実現するサービス等の展開を積極的に実施。
評判 サステナビリティ経営を怠ることによる企業ブランド価値の低下 中期から長期 市場や投資家との対話を通じて、当社として求められているサステナビリティ経営の確立と適切な運営を推進。
機会 製品・サービス 省エネ家電等に対する消費者ニーズの高まりによる売り上げの増加 中期 環境配慮製品・防災商品の需要を捉え、住設や省エネソリューションの提案(リフォーム含む)
評判 積極的な気候変動およびネイチャーポジティブ対応による消費者のレピュテーション向上に起因する売上や株価の増加 中期から長期 省エネ家電の積極的な販売やネイチャーポジティブの取り組み、サーキュラーエコノミーモデルを当社WEBサイト等、様々な外部発信を通じてレピュテーションを向上させる。
資源の効率 店舗・物流のエネルギー最適化、再エネ導入、包装材・廃棄物削減 中期から長期 資源の効率化が重要性を増すなか、グループアセットを活用した中古品の仕入れ・販売の拡大や、グループ内でのリサイクル率の向上を通じて、売上増およびコスト削減を見込む。

Prepare(対応計画:初期方針)

特定されたリスク・機会は、気候変動との関連性が高いものが多く、店舗・物流におけるレジリエンス強化やエネルギー対応が重要であると認識しています。洪水・浸水に対してはハザードマップの活用や設備対策、BCP訓練の実施を進め、猛暑に対しては省エネと両立した空調効率化や労働環境の改善に取り組みます。また、再生可能エネルギーの導入拡大および省エネルギーの徹底により、環境負荷低減と 事業継続性の向上を図ります。 資源循環に関しては、家電リサイクル法等に基づく回収・処理を着実に運用するとともに、店頭やECにおける回収導線の最適化を進めることで、廃棄物削減と資源循環の強化に取り組みます。加えて、買取・リユース事業の拡充により製品寿命の延伸を図り、環境負荷低減と機会創出の両立を目指します。 サプライチェーンにおいては、調達ガイドラインや環境方針の周知を通じてサプライヤーとの連携を強化し、包装材削減や代替素材の活用、環境負荷の高い工程への対応を進めることで、全体としてのリスク低減と持続可能な調達の実現を図ります。

【測定指標・ターゲット】

TNFDが推奨するグローバル中核開示指標に基づき、以下の指標を当社の依存・インパクトおよびリスク・機会に該当するものとして特定しました。
今後は、指標に関するデータの収集・分析、実績値の開示、KPIの設定に向けて検討を進めていきます。

〈当社の自然関連の依存・インパクトに関するグローバル開示指標と測定指標(初回)〉

指標NO 廃棄物の発生と処分量 指標 当社による測定指標
C2.2 汚染・汚染除去 廃棄物の発生と処分量 ・廃棄物の発生、処理量
(※拠点別の実測、集計整備)
・回収、リユース、リサイクル実績(家電4品目/小型家電/リチウムイオンバッテリー等)のKPI化

〈当社の自然関連のリスク・機会に関するグローバル開示指標と測定指標(初回)〉

指標NO リスク/機会 カテゴリー 当社による測定指標
C7.0 リスク 移行 自然関連の移行リスクに対して脆弱であると評価される資産、負債、収益および費用の価値
C7.1 リスク 物理的 自然関連の物理的リスクに対して脆弱であると評価される資産、負債、収益および費用の価値
C7.4 機会・業績 製品とサービス 自然環境に対し明らかにプラスの影響をもたらす製品やサービスからの収益の増加とその割合、およびその影響の説明

※ C1.0(取水量)等については、当社事業特性上の重要性を踏まえ、次年度以降に評価範囲を検討します。

【TCFDとの整合】

TNFDに沿った情報開示の取り組みは今回が初回であり、内容は直接操業を中心とした定性評価等、これまでに実施した取り組みとなっています。 これまでの分析結果においては、当社事業における自然資本/生物多様性の依存・インパクト、 リスク・機会は気候変動と関連性が高く、対応も一体的に進めるべきものと理解しています。 従いまして、当社は既にTCFDに基づく開示を行っており、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標の土台を活用し、自然関連指標の管理を同一の統合基盤で進めていきます。

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